色をそろえると、暮らしの迷いが少し減る

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夜勤明けの朝、コップを取ろうとして食器棚を開ける。

皿の形も色もバラバラ。もらいもの、なんとなく買ったもの、来客用にとってあるもの。数はあるのに、実際に使うのは、いつも同じ数枚。

片づいていないわけではない。なのに、開けた瞬間、なんとなく気持ちがざわつく。

——そんなふうに、「棚を開けるたびに、少し疲れる」と感じる人に向けて書きます。

これは、おしゃれな食器棚を作る話ではありません。色のばらつきを減らして、疲れている日でも迷いにくくするための、小さな工夫の話です。高いものを買いそろえる必要も、全部を捨てる必要もありません。

色も形もバラバラの食器が並ぶ棚、開けるたびに少しざわつく食器棚

棚を開けてざわつくのは、神経質だからではない

まず言っておきたいのは、食器棚を開けてざわつくのは、あなたが神経質だからでも、気にしすぎだからでもない、ということです。

食器は、毎日使うものです。だからこそ、棚を開けた瞬間の見た目は、思っている以上に、目に入りやすいものです。

色も形もバラバラのものが目に入ると、頭は無意識に、その一つひとつを「見て」しまいます。大きな不満はなくても、小さな違和感が、毎日の中で少しずつ積み重なる。

赤い茶碗、花柄の皿、キャラクターのマグ、いつのものか分からないコップ。一つずつは何でもないのに、まとめて目に入ると、情報がうるさく感じる。棚を開けるたびに、ほんの少しだけ、頭が働かされていたのだと思います。

以前に「部屋のノイズ」について書きました。目に入る情報が多いと、それだけで疲れやすくなる、という話です。食器棚の色のばらつきは、その、いちばん身近な例だったのだと思います。

色をそろえようと思ったきっかけ

色をそろえよう、と最初から考えていたわけではありません。

きっかけは、ある日、疲れて帰ってきて食器を洗ったとき、乾いた皿を棚に戻しながら、「なんで毎回、どこに何を置くか、少し考えてるんだろう」と気づいたことでした。

形も色も違うから、重ねる順番や置き場所を、無意識に毎回調整していた。数が多いから、奥のものは取りにくくて、結局、手前のものばかり使っていた。

一枚一枚は気に入っているのに、集まると、なぜか落ち着かない。その正体が「バラバラさ」だと気づいてから、色を寄せてみようと思いました。

視覚のノイズは、「減らす」より「そろえる」ほうが楽なこともある

目に入るごちゃつきを減らそうと思うと、まず「物を減らす」ことを考えます。

でも、物を減らすのは、けっこうしんどい作業です。捨てるかどうか迷うし、「いつか使うかも」が頭をよぎる。疲れている日に、その判断をするのは重い。

そこで、もう一つの方法があります。

減らすのではなく、「色をそろえる」。 減らすのがしんどい日は、まず色をそろえる。それでいいのです。

数をそのままにしても、色がそろうだけで、棚の中の見た目が、少し静かに見えることがあります。物を捨てる決断をしなくても、視覚のノイズを下げられる。これは、捨てるのが苦手な人にとっても、入りやすい方法です。

物を減らすのは、いわば「引き算」です。何を手放すかを、一つずつ決めなければいけません。でも、色をそろえるのは「まとめる」に近い。手放す判断をしなくても、見た目のうるささだけを、先に下げられます。同じ「視覚を静かにする」でも、心の負担は、少し違って感じました。

全部そろえなくていい。「基準の色」を決めるだけ

ブルーグレーと白で色をそろえた食器棚、視覚のノイズが減って静かな棚

色をそろえる、というと、すべて同じシリーズで買い直すイメージがあるかもしれません。

でも、疲れている人や、家計に余裕がない人にとって、それは負担が大きすぎます。全部を買い替えるなんて、現実的ではありません。

大事なのは、完璧に統一することではなく、「これから増やすなら、この色」と決めておくことです。

私の場合は、ブルーグレーと白を基準にしました。よく使う食器をその色味に寄せて、木製のものや黒い小物は、アクセントとして残しています。全部そろっていなくても、基準の色があるだけで、棚の中はずいぶん落ち着いて見えます。

今ある食器を、いきなり全部どうにかする必要はありません。まずは、残したい色を一つ決める。それだけで十分です。

基準の色が決まると、不思議と、他の色のものが少しずつ「浮いて」見えてきます。無理に捨てなくても、「これは、いつか手放してもいいかもな」と、自然に思えるようになる。急がなくていいのです。基準さえあれば、あとは少しずつ、そこへ寄っていきます。

「基準の色」があると、買い物の迷いも減る

基準の色を決めておくと、思わぬところで楽になります。

それは、買い物のときです。

安いから、かわいいから、なんとなく便利そうだから——そうやって食器を増やす前に、「今の棚の色に合うか」を、一度考えられるようになります。

基準がないと、疲れている時ほど、目についたものを、なんとなく選びやすくなります。そして、また棚の中がばらついていく。基準の色は、この「なんとなく増える」を、静かに止めてくれます。

減らすだけでなく、これ以上ノイズを増やさない。そのための、ゆるい物差しになります。

捨てる前に、一度「よけて」みる

とはいえ、使っていない食器を、いきなり捨てるのは不安です。特に食器は、「いつか使うかも」「来客のときにいるかも」と思いやすいものです。

そういうときは、捨てる前に、一度別の場所へよけてみるのがおすすめです。数を減らすためというより、まず棚の色のざわつきを見るためです。

数日から数週間、普段使う食器だけで生活してみる。そこで困らなければ、今の暮らしには必要度が低い、と判断しやすくなります。

私も、すぐに処分せず、一時的に分けて確認しました。使っていないものが見える場所にあるだけで、「どうしようかな」という判断を、ずっと先送りしている感覚が残ります。逆に、使うものだけに絞ると、棚を開けたときのざわつきが、少し減りました。

捨てる決断を、今日しなくていい。「よけておく」だけなら、疲れた日でもできます。

夜勤明けの朝、迷わない棚がうれしい

こういう小さな工夫が効いてくるのは、いちばん疲れているときです。

夜勤明けの、頭がぼんやりした朝。食器棚を開けて、迷わずにコップと皿を取れる。目に入るものが静かで、ざわつかない。

たったそれだけのことですが、疲れているときほど、この「迷わなさ」が、地味にありがたく感じます。

介護の仕事は、日々こまかい判断の連続です。家に帰ってまで、食器棚の前で小さく迷いたくない。食器棚の色をそろえるのは、おしゃれのためというより、帰ってからの小さな判断を、一つ減らすためでした。だから、毎日開ける場所こそ、先に静かにしておく。その効果を、いちばん実感できたのが、疲れて帰った日でした。

余裕のある休みの日は、多少ごちゃついていても気になりません。でも、疲れた日はそうはいきません。だからこそ、いちばん余裕のない日を基準にして、暮らしを整えておく。そう考えるようになりました。

今日できる、小さな一歩

朝の光が差すキッチンとそろった食器、疲れた朝でも迷わない静かな棚

今日できることは、一つだけで十分です。

食器棚を開けて、よく使っている食器の中から「残したい色」を一つだけ選んでみてください。

白でも、グレーでも、木の色でも、なんでもかまいません。今日は、捨てるかどうかまで決めなくて大丈夫です。「これから増やすなら、この色」と決めるだけで十分です。

なぜ食器棚からかというと、毎日、何度も開ける場所だからです。小さな変化に気づきやすい。だから、最初の一か所として向いています。

一気にそろえなくて大丈夫です。小さな違和感を、一つ減らす。その積み重ねが、疲れている日でも戻ってこられる棚を、少しずつ作っていきます。

おわりに

暮らしを整えるというと、大きな片づけや、一気に捨てることを想像しがちです。

でも、毎日見る場所の色を、少しそろえるだけでも、気持ちは変わります。物を減らすのがしんどい日は、減らさずに「そろえる」。それも、立派な整え方の一つです。

完璧にそろった棚でなくていい。開けたときに、少しだけ気持ちが静かになる。そんな棚になれば、それで十分だと思っています。


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