夜勤中、机に書類を広げていました。夜勤のあいだに終わらせておかなければいけない書類です。
一枚の書類だけを見て書けるものではありません。他の資料を開いて、該当するところを探し、書類の内容と見比べます。
合っているところを確認して、違うところは修正する。足りないところがあれば、その内容を書き込む。
資料を見て、書類に戻る。もう一度資料を確認して、ペンを動かす。目と手が、机の上を何度も行き来していました。
そんな途中で、ナースコールが鳴りました。
「夜勤だから仕方ないけど、何回中断させられるだろう」
頭に浮かんだのは、そんな言葉でした。
書きかけの欄にペンを置いて、席を立ちました。
この時は、作業を止めることよりも、そのあと机に戻ってからの方に手間がかかりました。

机に戻ると、まず「どこまでやったか」から確認した
対応を終えて机に戻ると、椅子に座り直して、さっきまで見ていた書類に目を落としました。
書類もペンも、席を立った時のままです。
でも、自分の頭の中まで、そのまま残っているわけではありませんでした。すぐにペンを持って、続きを書き始めることはできません。
まず確認したのは、自分がどこまでチェックしていたのか。
書類を上から一行ずつ目で追っていきました。終わっているところを探しながら、すでに確認した部分ももう一度読み直します。
「ここまでは見た」
次は、自分が何を書いたのかを確かめました。書き込んだ部分を読み直して、その内容をもう一度頭に入れます。
それでも、まだすぐには続きに入れません。
コールが鳴る前、自分は次に何を書こうとしていたのか。手元のペンを持ったまま、さっきまでの作業をたどり直しました。
書類の続きを始める前に、まず自分がいた場所まで戻る。
そこまでして、ようやく、またペンを動かせました。

そのあとも、ナースコールで何度か手が止まりました。対応を終えて机に戻るたび、また書類を見直して、どこまで終わっていたのかを探すところからです。
同じところを読み直して、書いた内容を確かめて、その前に考えていたことを思い出す。続きを書く前の確認が、そのたびに挟まりました。
その夜は、何度か中断されながらも、必要な書類を完成させることができました。
振り返ると、この時の自分にとって負担だったのは、作業が止まることそのものよりも、机に戻ってから「どこまでやったか」を取り戻すことでした。
今は、処理したところに印を残している
中断のたびに書類を読み返して、同じところを何度も確認する。
それが、自分には大変でした。
ある時、処理したところに印を付けてみました。たまたま始めたやり方でしたが、自分には合っていました。
今は、書き込みができる書類なら、終わったところにマーカーを引いたり、書き込みを残したりしています。
ナースコールの対応を終えて机に戻った時、まず見るのは、その印です。
マーカーの引かれた行を目で追う。書き込んだ文字を読む。
「ここまでは終わっている」
分かるところまで戻ってから、その続きを書き始めます。
一方で、書き込みができない書類では、同じようにはできません。
そんな時は、最後に読んでいた資料をもう一度見ます。そこに書かれている言葉や数字と、自分の記憶に残っているものを照らし合わせながら、どこまで見ていたのかを探します。
書類によって、戻るための手がかりは違います。
あの夜、自分にとって負担だったのは、作業が止まることそのものよりも、戻ってから「どこまでやったか」を取り戻すことでした。

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