クレジットカードの明細を見ていて、手が止まる。
名前を見ても、一瞬何のサービスか思い出せない引き落としが、いくつかある。ああ、あれか。最近ぜんぜん開いてないな——そう思いながら、明細を閉じる。
「解約しなきゃ」とは、ずっと思っている。でも、その「しなきゃ」が、もう何か月も続いている。夜勤明けや遅出の帰りに、布団の中で「無料期間だけ」と登録したサービスほど、あとで見直す気力は残っていないものです。
——そんなふうに、「使っていないサブスクを、やめられないまま払い続けている」人に向けて書きます。
結論を先に言うと、やめられないのは、あなたがルーズだからではありません。そして、全部を一気に整理する必要もありません。元気な日に、一番使っていない一件だけ。それで十分です。

やめられないのは、だらしないからではない
まず言っておきたいのは、サブスクを解約できずにいるのは、あなたがだらしないからではない、ということです。
思い出してみてください。登録したときのことを。
たいてい、ワンタップか、ボタン一つだったはずです。無料期間につられて、スマホで数十秒。それで契約は始まります。
では、やめるときはどうか。
アプリからは解約できず、ブラウザでログインし直す。パスワードを思い出す。設定の奥の「契約管理」を探す。「本当に解約しますか」と何度も引き止められて、アンケートに答えて、ようやく完了——。
入口は一歩なのに、出口は何画面も先にある。 サービスによって差はありますが、登録より解約のほうが手順が多いことは、珍しくありません。
つまり、解約が進まないのは意志の問題ではなく、やめる側の手続きのほうが、重く作られているからなのです。
解約は、「元気」を要求する作業
もう一つ、見えにくい理由があります。
解約の手続きは、小さいようでいて、実は「考える力」を使う作業です。パスワードを探す。画面をたどる。「本当にやめていいのか」ともう一度自分に確認する。
疲れて帰った夜に、これをやる気力は、残っていません。
私にも覚えがあります。夜勤明けの布団の中で登録した動画配信サービス。最初のひと月は観ていたのに、シフトが変わって生活が乱れると、開かなくなりました。「解約しよう」と思ったのは、たしか三か月目。実際に解約したのは、それから半年近くあとでした。
その間、観ていない月額を、ただ払い続けていたことになります。金額にすれば数千円。でも、それ以上に重かったのは、明細を見るたびに「またやってしまってる」と、小さく自分を責めることでした。
サブスクの厄介なところは、お金だけでなく、「気にし続ける」という負担が毎月セットでついてくることです。
しかも、この負担は先送りするほど増えていきます。「解約しなきゃ」と思った回数だけ、小さな自己嫌悪が積もっていく。数百円の話のはずが、気づけば「自分はお金の管理ができない」という気分にまで、育ってしまうのです。実際は、管理ができないのではなく、面倒な手続きを疲れた日に回されているだけなのに。
全部やめようとするから、一件もやめられない

解約を思い立った日、多くの人は「よし、この機会に全部整理しよう」と考えます。
でも、これが罠です。
サブスクが三つ、四つあると、「全部やる」は手続き三、四回ぶんの作業になります。重い。だから「時間があるときにまとめてやろう」になる。そして、その「時間があるとき」は、なかなか来ません。
これは、片付けでも食事でも同じでした。全部やろうとすると、一つも始められない。
だから、発想を変えます。
元気な日に、一番使っていない一件だけ、解約する。
それだけでいいのです。
- まず、契約しているサブスクを書き出す(記憶で思い出さなくて大丈夫。家計簿アプリで支出の一覧を見ると、毎月の引き落としが見つけやすいです。スマホの「定期購入」画面も忘れずに)
- その中で、「先月一度も使わなかったもの」に印をつける
- 印の中で一番金額が大きいものか、一番迷わないものを、一件だけ選ぶ
残りは、放っておいてかまいません。来月、また元気な日が来たら、次の一件。そのペースで十分です。
ちなみに、サブスクが見つけにくいのは、支出の出口が多いせいでもあります。クレジットカードが何枚もあって、口座や決済サービスが分かれていると、引き落としの居場所も散らばります。逆に、出口が絞られていると、支出の一覧を一か所見るだけで、サブスクは全部見つかる。カードや口座を絞ることは、こういう見直しを毎回楽にしてくれる土台にもなります。
私が最初に書き出したとき、契約は五つありました。全部やめようとしていた頃は、半年間、一件も進みませんでした。「一件だけ」に変えてからは、休みの日の午前中に一件、翌月にもう一件。二か月で、使っていなかった二件がなくなりました。進みは遅いようで、「全部やろう」としていた半年より、ずっと速かったのです。
一件だけなら、手続きの量はかなり小さくなります。もし15分で終わらなくても、ログインできた、契約画面までたどり着けた——そこまででも前進です。「全部」だと始められなかったことが、「一件だけ」なら、少し動きやすくなります。
解約の前に、一つだけ確認を
一つだけ、注意書きです。
サブスクの中には、年払い契約のもの、解約のタイミングで扱いが変わるもの、途中解約で残り期間が戻らないものがあります。無料期間中のものは、終了日も確認しておきたいところです。
また、どこから契約したかも見ておくと安心です。公式サイトからなのか、Apple IDやGoogle Play経由なのか、別のサービス経由なのかで、解約する場所が変わることがあります。
だから、解約ボタンを押す前に、解約ページの説明だけは、ひと通り読んでください。 そして、解約が終わったら、完了メールか完了画面を確認する。ここまでで一件、完了です。
急がなくていいので、この確認だけは、飛ばさないのがおすすめです。
一件やめて、変わったこと
一件解約して、まず感じたのは、金額のことではありませんでした。
明細を見たときの、小さな引っかかりが、一つ消えたことです。
「またやってしまってる」と思う相手が、一つ減る。毎月の「気にし続ける物」が、一つ減る。物を減らしたときに頭の中の確認作業が減ったのと、同じ感覚でした。サブスクも、部屋に置いてある物と同じで、契約している数だけ、頭の中の管理が増えているのだと思います。
もちろん、月数百円の解約で、家計が急に変わるわけではありません。でも、年で見れば数千円。それが二件、三件と積み重なれば、月末の小さな引っかかりを減らす助けになることもあります。
使っているサブスクは、堂々と続けていい
念のために書いておくと、これは「サブスクをやめよう」という話ではありません。
毎日使っている音楽配信。疲れた夜の支えになっている動画配信。それらは、暮らしを支えている立派な出費です。堂々と続けていいと思います。
やめる候補は、あくまで「使っていないのに、手続きが面倒で残っているもの」だけ。使っているか迷うものも、無理にやめなくていい。迷うということは、まだ役目があるのかもしれません。
大事なのは数を減らすことではなく、「使っていないものに、払い続けていないか」を、たまに見ることです。
今日できる、小さな一歩

今日は、一つだけ。
契約しているサブスクを、書き出してみてください。
解約は、しなくて大丈夫です。今日は、書き出して、「先月使ったか」に○×をつけるだけ。
スマホのメモでも、紙の端でもかまいません。記憶で思い出そうとしなくて大丈夫です。家計簿アプリの支出一覧か、クレカの明細、スマホの「定期購入」の画面——支出の記録に、全部残っています。見つかる範囲だけで十分です。
×がついたものがあっても、今日は責めなくていい。それは、次の元気な日の「一件」の候補が見つかった、ということです。
おわりに
使っていないサブスクをやめられないのは、あなたがルーズだからではありません。入口は一歩で入れるのに、出口は何画面も先にある。そういう作りの中で、疲れた体で暮らしていれば、後回しになるのは自然なことです。
だから、全部やめようとしなくていい。元気な日に、一番使っていない一件だけ。
その一件が、お金と一緒に、「気にし続ける」という小さな重さも、一つ下ろしてくれるかもしれません。
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