定位置を決めただけでは、片づけは続かない
仕事から疲れて帰ってきた日は、鍵も財布も書類も、とりあえず近くに置いてしまうことがあります。
その場では楽です。
でも翌朝になって、「あれ、どこに置いたっけ」と探すことになる。
前回の第10話では、物を捨てる前に「戻す場所」を決めることについて書きました。
物の住所が決まっていないと、片づけは毎回その場しのぎになります。だから、まずは定位置を決める。これはとても大事です。
ただ、実際に暮らしていると、次の壁が出てきます。
「戻す場所は決めたのに、なぜか続かない」
第10話が「物の住所を決める話」だとしたら、今回は「その住所に無理なく戻れる道を作る話」です。
鍵は玄関のトレーに置くと決めた。書類は棚に戻すと決めた。服はハンガーにかけると決めた。
それでも、疲れて帰ってきた日は机の上に置いてしまう。洗濯物は畳まずに山になる。郵便物はとりあえず棚の端に積まれていく。
これは、意志が弱いからではありません。
多くの場合、原因は「戻す場所」ではなく「戻しにくさ」にあります。
片づけが続かない原因は、手間が多すぎること
片づけが続かない時は、自分を責める前に、戻すまでの手間を見直した方がいいです。
たとえば、鍵を戻すために、棚の扉を開けて、小さな箱を引き出して、その中の仕切りに入れる。
これが休日の昼ならできるかもしれません。
でも、仕事終わりで疲れている時に毎回できるかというと、かなり厳しいです。
片づけの仕組みは、元気な時の自分ではなく、疲れている時の自分を基準に作る必要があります。
介護の仕事をしていると、この感覚はかなり大事だと感じます。
現場でも、物品の場所がきれいに決まっていても、取り出しにくかったり、戻す場所が細かすぎたりすると、忙しい時間帯には崩れます。手袋、パッド、記録用紙、消耗品などは、使う場所の近くにあり、誰が見てもすぐ分かる状態でないと続きません。
家庭の片づけも同じです。
「正しく戻せるか」よりも、「疲れていても戻せるか」を基準にした方が、暮らしは整いやすくなります。
収納は細かくしすぎない
片づけようと思うと、つい細かく分類したくなります。
文房具はペン、はさみ、付箋、クリップで分ける。書類は種類ごとにファイルを分ける。ケーブルも用途ごとに分ける。
もちろん、細かい分類が合う人もいます。
でも、片づけが続かない人にとっては、分類が細かすぎること自体が負担になります。
おすすめは、最初は「ざっくり収納」にすることです。
たとえば、毎日使う小物は「毎日ボックス」にまとめる。外出時に使うものは「外出ボックス」にまとめる。まだ判断できない書類は「一時保管」にまとめる。
完璧に分けなくてもいいです。
大事なのは、物が床や机に散らばらず、戻る先があることです。
具体例として、玄関なら次のようにします。
鍵、財布、腕時計、イヤホンなど、外出前後に使うものを小さなトレーにまとめる。帰宅したら、ポケットの中身を全部そこに出す。
これだけで、「鍵がない」「財布がない」「イヤホンどこに置いたっけ」がかなり減ります。
ポイントは、きれいに並べることではありません。
帰ってきた瞬間に、何も考えず置けることです。
戻す場所は、使う場所の近くに置く
定位置を決めても続かない時は、置き場所が遠すぎることがあります。
人は、使った場所から遠いところには戻しにくいです。
たとえば、爪切りをリビングで使うことが多いのに、洗面所の引き出しを定位置にしているとします。
理屈では洗面所に戻せます。でも実際には、リビングの机の上に置きっぱなしになりやすいです。
この場合は、爪切りの定位置を「リビングの小物ボックス」に変えた方がいいかもしれません。
片づけは、理想の場所に戻すことではなく、実際に戻せる場所に置くことが大事です。
もう一つの具体例は、洗濯物です。
下着や靴下を毎回きれいに畳んで、種類ごとに仕切って収納する。これができるなら、それで問題ありません。
でも、忙しい日や夜勤明けにそれが負担になるなら、同じ種類のものをカゴに入れるだけでも十分です。
靴下は靴下のカゴへ。下着は下着のカゴへ。部屋着は部屋着の場所へ。
見た目の美しさより、毎回戻せることを優先する。
それだけで、床や椅子に洗濯物が積み上がるのを防ぎやすくなります。
「一時置き場」は悪ではない
片づけが苦手な人ほど、「一時置き場」を作ると散らかると思いがちです。
でも、一時置き場がない方が、かえって散らかります。
なぜなら、人はすぐに判断できない物を必ずどこかに置くからです。
郵便物、レシート、あとで見る書類、使うか迷っている小物。
これらを毎回すぐに判断するのは、かなり疲れます。
だからこそ、「判断待ち」の場所を作っておくと楽になります。
ただし、一時置き場にはルールが必要です。
おすすめは、一時置き場を一つだけにすることです。
たとえば、A4サイズの浅いトレーを一つ用意して、判断できない紙類はそこに入れる。いっぱいになったら見直す。週1回だけ確認する。
これくらいで十分です。
一時置き場を作る目的は、物を放置することではありません。
判断を後回しにしても、散らかりにくい形にすることです。
片づけの基準は「ちゃんと」より「戻る」
暮らしを整える時、つい「ちゃんと片づけよう」と考えてしまいます。
でも、毎日を回すうえでは、ちゃんとしているかより、戻る仕組みがあるかの方が大事です。
きれいな収納ケースを買っても、戻すのが面倒なら続きません。
細かいラベルを貼っても、分類が難しければ崩れます。
見た目が少し雑でも、物が自然に戻るなら、その仕組みの方が強いです。
特に、仕事で疲れやすい人、夜勤がある人、家に帰ると何もしたくない人は、片づけに気合いを求めすぎない方がいいです。
疲れている自分でもできる形にしておく。
それは甘えではなく、暮らしを回すための設計です。
収入に余裕がない中で暮らしを整えるなら、最初から収納用品を買い足さなくてもいいと思っています。
まずは家にある箱、空いているトレー、使っていないカゴで試してみる。
それで戻しやすくなるなら、十分です。
お金をかける前に、戻す手間を減らす。
その方が、自分には続けやすいと感じています。
今日できる小さな一歩
今日やることは、一つだけで大丈夫です。
家の中で、よく置きっぱなしになる物を一つ選んでください。
鍵、財布、郵便物、リモコン、洗濯物、充電ケーブル。何でもいいです。
そして、その物について次の一つだけを考えます。
「これは、どこなら疲れていても戻せるか」
理想の収納場所ではなく、実際に戻せる場所を選んでください。
必要なら、箱でもトレーでもカゴでも大丈夫です。最初から完璧に分類しなくていいです。
まずは、一つの物が自然に戻る場所を作る。
その小さな仕組みが増えていくと、片づけは気合いではなく、暮らしの流れになります。
定位置を決めた次に必要なのは、きれいに収納することではありません。
疲れていても戻せるように、暮らしの動線を少しだけ整えることです。
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この記事は、こたログの「整える暮らし」シリーズの1本です。限られた収入と時間の中で、物・お金・心の管理コストを減らし、自分が回せる暮らしを作る工夫を書いています。
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