やる前から「どうせ無理」と思う人へ。まだ起きていない失敗は、事実ではない

整える暮らしシリーズのメンタル系アイキャッチ画像 整える暮らし

新しい利用者さんの担当を打診された。研修に誘われた。ちょっとした提案をしてみないかと言われた。

そのとき、頭の中で先に答えが出てしまう。「どうせ無理」「きっとうまくいかない」。まだ何も始めていないのに、結果だけが先に決まっている。

断った後で、少しだけ引っかかる。本当に無理だったのか、それとも、無理だと決めつけただけだったのか。——そんな人に向けて書きます。

先に結論を言うと、やる前から諦めてしまうのは、あなたに能力がないからではないかもしれません。まだ起きていない失敗を、もう起きたことのように扱っているからだと思います。

介護施設の静かな廊下に置かれたクリップボード。午後の柔らかい光

諦めるのは、能力がないからではない

まず言っておきたいのは、新しいことの前で足がすくむのは、あなたが弱いからでも、能力が足りないからでもない、ということです。

新しいことを頼まれたとき、うまくいく場面より、失敗した場面が先に浮かぶことがあります。「うまく説明できなかったらどうしよう」「反対されたら気まずい」「引き受けて後悔するかもしれない」——そう考えること自体を、責めなくていいと思います。新しい担当や提案には、失敗したときの負担もありますし、うまくできる保証もありません。悪い場面が先に浮かぶのは、自然なことだと思います。

まだ何も言っていないのに、頭の中では、すでに何度も失敗しているような感覚になる。それだけ具体的に思い浮かぶのは、それだけ考えているからでもあります。

「まだ起きてない失敗」を、先に決めつけてしまう

苦しくなるのは、その悪い予想を、まだ起きていないうちから、もう決まったことのように扱ってしまうときです。

「どうせ失敗する」と思うと、やる前から気持ちが重くなります。重くなった気持ちは、「やっぱり無理そうだ」という感覚を強めます。その感覚が、「だから、やらない方がいい」という結論を後押しします。

一度もやっていないのに、結果だけが先にできあがっている。予想が、いつのまにか事実の代わりをしています。

「予想」と「もう分かっていること」を分けてみる

「どうせ無理」が浮かんだとき、それをそのまま結論にする前に、一度だけ分けてみる方法があります。

すでに分かっていることと、まだ起きていない予想を、分けて考えることです。

たとえば、「今月は夜勤が多くて、研修へ行く時間の余裕がない」は、すでに分かっていることです。一方で、「参加しても、きっと何も理解できない」「反対されて終わるだろう」は、まだ確かめていない予想です。

どちらも無視しなくて大丈夫です。ただ、同じ重さの物として扱わないようにするだけで、頭の中の結論が、少し変わることがあります。

分かっていることは、そのまま判断の材料にしていい。予想のほうは、「まだ起きていない」というただ一点だけ、覚えておく。それだけです。

たとえば、過去に似た担当で体調を崩したことがある、必要な知識がまだ足りない、周りの支援が期待できない——こうした事情は、すでに分かっている条件です。無視せず、判断に使って構いません。一方で、「絶対に評価が下がる」「誰にも頼れない」といった決めつけは、まだ確かめていない予想のほうに入ります。

一人暮らしの部屋の窓辺に置かれた湯気の立つお茶。静かな午後の光

新しい担当や提案の場面ほど、これは起きやすい

これは、介護の仕事のなかでも、新しい担当や提案の場面で、特に起きやすいと思います。

新しい利用者さんの担当、初めての委員会や係、ちょっとした改善の提案。どれも、経験していない場面です。経験していない場面ほど、頭の中の悪い予想は具体的になりやすく、「どうせうまくいかない」という声が大きくなります。

新しい担当や研修を頼まれても、その場ですぐ返事を求められることがあります。勤務中は利用者対応や記録が続き、落ち着いて条件を考える前に、「今の自分には無理」と答えたくなる日もあります。だからこそ、その場で結論を出さず、「少し考えてから返事をします」と言ってもいいのだと思います。

夜勤明けや連勤の途中に声をかけられることも、珍しくありません。体力が残っていない状態で先のことを考えると、悪い場面のほうがどうしても浮かびやすくなります。それは、その日の疲れのせいであって、その仕事に向いていないという証拠ではありません。落ち着いているときにもう一度考え直すだけで、印象が変わることもあります。

断ってもいい。ただ、決めつけたことには気づいておく

念のため書いておくと、新しいことを断ること自体は、悪いことではありません。

余力がない時期に無理に引き受けなくていいですし、気が乗らないことを断る権利は、誰にでもあります。断ることが悪いのではありません。ただ、「絶対に失敗する」という予想だけで決めたのか、今の時間や体力、支援の有無といった、すでに分かっている条件を見て決めたのか、そこは分けて考えてよいと思います。

「これは予想かもしれない」と気づいても、すぐ引き受ける必要はありません。詳しい条件を聞くだけでもいいですし、返事を少し待ってもらってもいい。そのうえで、今は難しいと判断して、断っても大丈夫です。

今日できる、小さな一歩

もし何か一つだけ試すなら、次に「どうせ無理」が頭に浮かんだとき、次のように自分に聞いてみてください。

「これは、もう分かっていること? それとも、まだ起きていない予想?」

分かっていることなら、そのまま判断の材料にして構いません。予想だったなら、すぐに結論を出さなくて大丈夫です。

今日は、何かに挑戦しなくても大丈夫です。この問いを、一度頭の中で言ってみるだけで十分です。

玄関に整えて置かれた仕事用の靴。朝の静かな光

おわりに

やる前から諦めてしまうのは、能力が足りないからではなく、まだ起きていない失敗を、もう起きたことのように扱っているからかもしれません。

予想は、当たることもあれば、外れることもあります。少なくとも、まだ確かめていない時点では、事実ではありません。

「どうせ無理」が浮かんだら、すぐに前向きにならなくていい。ただ、それがもう分かっていることなのか、まだ起きていない予想なのか、一度だけ分けてみる。それだけで、結論を出す前に、立ち止まる場所ができるのだと思います。


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