利用者さんには、笑顔で声をかける。
同僚が困っていたら、自分の手を止めて手伝う。
後輩のミスも、責めずにそっとフォローする。
人にはちゃんと優しくできるのに、自分のことになると、急に厳しくなる。
そんなことは、ありませんか。
疲れていても「まだ動ける」と自分を奮い立たせる。
よれよれの部屋着のまま、雑な食事で済ませる。
少しでも休もうとすると、「サボっている」と自分を責めてしまう。
他人には向けられる優しさが、自分にだけは向けられない。
それは、あなたの性格が冷たいからでも、自分を大事にする力がないからでもありません。
人に気を配れる真面目な人ほど、自分のことは後回しになりやすいだけです。
この記事は、整える暮らしシリーズ第53話です。
無理に自分を好きになろうとしなくても、ほんの少し、自分の扱い方を変えるだけで、責める気持ちが少しゆるむことがあります。そんな整え方をまとめます。

「自分を大事に」が、いちばん難しい
「もっと自分を大事にしていいんだよ」と言われることがあります。
頭では分かっていても、どうすればいいのか、ピンとこない。
自分のために時間やお金を使うのは、なんだか申し訳ない。
そう感じてしまう人は、少なくないと思います。
特に、人をケアする仕事をしていると、なおさらです。
一日中、人の気持ちや体に気を配って、家に帰る頃には、自分をいたわる力が残っていません。
自分を大事にできないのは、わがままが足りないからではありません。
ずっと、人のために優しさを使ってきた、その裏返しなのだと思います。
「自分」だと思うから、優しくできない
ここで、一つだけ、試してほしい考え方があります。
疲れている自分を、「自分」だと思わないことです。
代わりに、「大切な親友」だと思ってみます。
想像してみてください。
学生時代からの仲のいい友だちが、仕事でくたくたになって、ご飯も食べずに、部屋の隅でうずくまっている。
あなたは、その友だちに、なんて声をかけますか。
「だらしないな」「もっと頑張れ」とは、言わないはずです。
「おつかれさま」「とりあえず、あったかいもの飲もう」「今日はもう休みなよ」。
そんなふうに、優しい言葉をかけるのではないでしょうか。
その優しさを、そのまま自分に向ける。
それだけのことです。
自分にかけると恥ずかしい言葉も、「大事な友だちにかけるつもり」なら、少しだけ出しやすくなることがあります。
疲れているのは、あなたではなく、大切な親友。
そう思って扱うと、自分を責める手が、少しゆるみます。
休む時間を作る話とは、少し違います。ここで考えたいのは、疲れている自分に、どんな態度で接するか、ということです。
1日5分、自分を「もてなす」
考え方が分かったら、次は、ほんの少しの行動です。
お金をかける必要はありません。1日5分でいいです。

たとえば、飲み物。
いつもの缶コーヒーではなく、ドリップの一杯を、香りまでゆっくり味わう。
100円くらいのもので十分です。
その5分だけは、自分を「お客さん」として、もてなすつもりで過ごします。
たとえば、部屋着。
よれよれのものを着ていると、気持ちまで、なんとなくよれてきます。
すぐに買い替えなくても大丈夫です。まずは、家にある中でいちばん楽な部屋着を選ぶだけでもいいです。
お風呂上がりに、少し使い心地のいいタオルを選ぶだけでも、自分を雑に扱わないきっかけになります。
たとえば、何もしない時間。
スマホを少し離れたところに置いて、5分だけ、ぼんやりする。
予定も情報も入れず、ただ静かに過ごす時間を、自分にプレゼントします。
どれも、小さなことです。
でも、「自分にこれくらいはしてあげていい」と思えること自体が、大事なのだと思います。
人をケアする仕事だからこそ、自分に休符を
介護の仕事は、人の気持ちに寄り添い続ける仕事です。
相手の表情を読み、声色を気にして、ずっと気を張っています。
それは、立派なことです。
でも、人にやさしさを注ぎ続けると、自分のぶんは、どんどん減っていきます。
だからこそ、家に帰ったら、自分にも少しだけ、やさしさを戻してあげてください。
仕事で人をケアしているあなたは、人にかける言葉や、少し楽にする工夫を、きっといくつも知っています。
その知っているやさしさを、5分だけ、自分にも向ける。
ずっと気を張ってきた自分に、5分だけ力を抜く時間を置いてあげる感じです。

今日できる小さな一歩:自分を親友だと思って、1つだけ優しくする
今日やることは、一つだけです。
今日の自分を、「大切な親友」だと思って、何か一つだけ、優しくしてみます。
たとえば、親友に出すつもりで、あたたかい飲み物を一杯用意する。
少し早く、布団に入る。
「今日もよくやったな」と、心の中で声をかける。
どれか一つで、十分です。
自分に厳しくしてしまうのは、あなたが冷たいからではなく、人に気を配る時間が長くて、自分に向ける分を後回しにしていただけかもしれません。
疲れた自分を、責める相手ではなく、いたわる相手として見てみる。
それだけでも、夜の自分を責める時間が、少しだけ短くなることがあります。
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